2級商業簿記テキストの サンプル

2級商業簿記の単元で『連結会計』の出だしです。

『連結会計』は2級では、非常に重要な単元ですが、問題レベルが高いので皆さんが苦手にしている単元です。

 

2級商業簿記テキストは全体で約250ページですが、『連結会計』はこのうち約50ページかけて説明しています。

 

 

今回は5ページほど載せました。

〔1〕連結財務諸表(1級でも非常に重要な単元です。)

 平成29年11月(147回)試験から2級の範囲に入った単元です。

(P188以降には147回、148回、156回の試験で出た問題の類題を載せました。)

 

連結財務諸表とは、親会社と子会社の合体した財務諸表(損益計算書、貸借対照表など)のことです。企業グループは、この連結財務諸表の作成・公表が義務付けられています。

 

これは、昭和50年にコインクーラー(コインテレビみたいなもの)の製造メーカーである日本熱学という一部上場の大企業が、ある日突然倒産した事件がきっかけです。

 

当時、コインクーラーの製造をしていた日本熱学は、その売れ行きが不振であるにもかかわらず、販売専門の子会社、エアロマスターに押し付け販売する形で、見掛けだけの利益を計上していました。しかし、子会社のエアロマスターが大量の製品の売れ残りをかかえて、資金繰りが悪化し倒産すると、親会社の日本熱学も同時に倒産しました。

   

親会社である日本熱学だけの業績を見て投資してきた株主にとっては、上場されていない子会社のエアロマスターの状況などわかるはずもなく、まさに、寝耳に水の事件です。

   

逆に、このことは、企業の業績というものは、子会社も含めた全体で見なければ本当のことは、わからないという教訓にもなったのです。

   

以上のような反省から、すでに連結財務諸表の作成を義務付けていたアメリカに倣って、わが国でも昭和52年4月1日以降に開始される事業年度からは証券取引法に基づく企業内容の開示の一環として、連結財務諸表の提出、公表が義務付けられるようになりました。

   

現在、親会社は子会社も含めた連結財務諸表(連結損益計算書、連結貸借対照表など)の作成・公表が義務付けられています。

 

 

ここで、子会社とは、   

①他の企業の議決権の過半数を所有している会社、または

   

②議決権が50%以下であっても、高い比率の議決権を保有しており、かつ当該会社の意思決定機関を支配している会社です。

    

このようなとらえ方を支配力基準といいます。 

 

①でいう議決権とは、株式のことです。

いま、A社がB社の発行済み株式の50%超を保有していれば、B社はA社の子会社です。

ただし、50%ジャストの保有では子会社とはいいません。A社が、B社の発行済み株式の50%を保有していても、B社は、A社の子会社とはいいません。

   

反対側に、残り株式(50%)を持つ企業が存在する可能性があるからです。

また、A社とその子会社(あるいは孫会社)たるB社の二社で、C社の発行済み株式の50%超を保有していれば、Cは、A社の子会社です。

  

②でいう親会社子会社の例に、ルノーと日産自動車があります。(ルノーと日産の例は、本テキストでは、数年前のゴーン事件が発生する以前から行っていたので、そのまま説明を続けます。) ご存知のように、ルノーは日産の株式の約44%位しか保有していませんが、最近まで、日産のトップ(会長)はルノー出身のゴーンさんでした。

   

そして、ゴーンさんが日産の意思決定機関(取締役会)を支配していたので、日産はフランスのルノーの子会社になります。(ルノーは、フランス国内で日産を含めた連結財務諸表を公表しています。フランスにも連結会計の制度があるのです。)

   

なお、問題文では、親会社をP社、子会社をS社とすることがあります。

P社のPとは、親(Parent:ピアレント)のPです。P社は親会社を意味します。

S社とは、子会社(Subsidiaries:サブシィディエリィズ:従属のという意味)の略でS社です。Son(息子)という意味ではありません。

 

〔2〕連結財務諸表の作成日

(1)親会社が子会社の支配獲得日には、連結貸借対照表のみ作成しま 

  す。

(2)その後の連結決算日(親会社の決算日)には、

  ①連結貸借対照表

  ②連結損益計算書

  ③連結株主資本等変動計算書 など5つの表(書類)を作成します。

 

 

〔3〕支配獲得日の連結貸借対照表の作成方法

親会社が子会社の支配獲得日には、親会社と子会社の個別貸借対照表を合算して、連結貸借対照表のみ作成します。(なお、支配獲得日に連結損益計算書の作成は無理です。支配獲得しただけで、親会社、子会社の関係は始まったばかりです。支配獲得した瞬間は連結の利益は存在しない。これからP社S社で利益を稼ぐのだから、連結損益計算書は作れないです。)

 

   P社財務諸表   

              合 算 +  連結修正仕訳  = 連結財務諸表  

   S社財務諸表   

 

〔4〕子会社資本の扱い

連結B/Sの作成にあたっては、支配獲得日の親会社と子会社の資産、負債を加えますが、子会社の資本(純資産)は加えません。計算に入れません。連結B/Sに計上しません。連結B/Sに計上する資本は、親会社の資本だけです。

 

(理由)今、①現金1億円を元手に資本金1億円のA社を設立。 ②次に、A社がこの1億円から5千万円出して、資本金5千万円のB社を設立。 ③B社がこの5千万円から3千万円を出して、資本金3千万円のC社を設立した とします。

 

このとき、ABC企業グループが所有する現金は1億円です。1億8千万円ではありません。

   

当然、グループの資本金も合計1億円です。

ABC企業グループが所有する現金(資金)が1億円なら、連結B/Sの資本金も1億円です。ということは、グループで考えたとき、子会社の資本金は計算に入れないということです。

 

 

〔5〕資本連結の仕訳

上で説明したように連結B/Sを作成するとき、子会社の資本は計算にいれません。

  

連結にあたっては、「子会社の資本」は消去します。また、親会社のB/S上の「S社株式勘定」も連結B/Sには計上しません。(S社株式=子会社株式です。)

   

そのため、連結精算表の修正記入の欄で、「子会社の資本」と「親会社の投資勘定(S社株式勘定)」は相殺消去の仕訳をします。

 

 

 

*P社が手持ち資金から¥100,000を出して、100%子会社のS社を設立したとします。

P社は、これをB/S上で、S社株式100,000として計上しています。一方、S社のB/S上の資本金50,000、資本剰余金30,000、利益剰余金20,000は、P社の出した金であり、それは、P社のS社株式100,000が姿を変えたものです。

よって、P社とS社を連結(合体)するにあたっては、これらを相殺消去します。

   

上記のように、「子会社の資本」と「親会社の投資勘定(S社株式)」は相殺消去します。これを資本連結といいます。資本連結では、以下の仕訳を行います。

 

 ①100%子会社のときで、子会社純資産の金額とS社株式の金額が同じ(左右バランスが合うとき)パターン

(資本連結の仕訳)

(借方)(子会社)資 本 金  ×××/(貸方)S社株式  ×××

    (子会社)資本剰余金    ××

    (子会社)利益剰余金    ××

 *資本金の前の(子会社)は、わかりやすくするために勝手に付けただ

  けです。

 

 ②100%子会社のときで、子会社純資産の金額とS社株式の金額の左右

  バランスが合わないとき、差額は「のれん」パターン

(資本連結の仕訳)

(借方)(子会社)資 本 金  ×××/(貸方)S社株式  ×××

    (子会社)資本剰余金   ××

      (子会社)利益剰余金   ××

             の れ ん   ××

 

 ③100%子会社ではない(一部外部株主が存在=非支配株主持分で計上する)ときで、左右バランスが合うとき(「のれん」なし)パターン

(資本連結の仕訳)

(借方)(子会社)資 本 金  ×××/(貸方)S社株式  ×××

    (子会社)資本剰余金    ××    非支配株主持分   ××

    (子会社)利益剰余金    ××

 

 ④100%子会社ではない(一部外部株主が存在=非支配株主持分で計上 

  する)ときで、左右バランスが合わないとき、差額は「のれん」パタ

  ーン

(資本連結の仕訳)

(借方)(子会社)資 本 金  ×××/(貸方)S社株式  ×××

    (子会社)資本剰余金   ××    非支配株主持分  ××

    (子会社)利益剰余金   ××

           の れ ん   ××

    *試験対策として、覚える仕訳は上記④の仕訳です。

 

 

 

*貸方・S社株式とは、子会社株式という意味です。親会社のB/SにはS社株式勘定で計上されているので、これを消去するため、貸方・S社株式とします。

   

*③、④で出てくる、非支配株主持分とは、外部株主の持分です。

たとえば、親会社ルノーが日産自動車の株式の70%を保有しているとしたとき、日産自動車における外部株主の持分は30%です。日産自動車の純資産の30%は、外部株主のものです。

    

仮に、日産自動車の純資産が1,000億円なら、非支配株主持分は30%で300億円です。

連結貸借対照表では、これを非支配株主持分勘定(資本)で計上します。

   

*「のれん」は借方・貸方の差額です。いきなり計算できるものではないです。「のれん」は固定資産の一つで、無形固定資産に属します。

 

以下の⑤と⑥は、試験にはまず出ないと思いますが、参考までに書きました。

 

⑤100%子会社のときで、子会社純資産の金額とS社株式の金額の左右バランスが合わないとき、差額は「負ののれん発生益」(特別利益)パターン

(資本連結の仕訳)

(借方)(子会社)資 本 金  ×××/(貸方)S社株式  ×××

    (子会社)資本剰余金   ××   負ののれん発生益×××

    (子会社)利益剰余金   ××

 

⑥100%子会社ではない(一部外部株主が存在=非支配株主持分で計上す

 る)ときで、左右バランスが合わないとき、差額は「負ののれん発生

 益」とするパターン

(資本連結の仕訳)

(借方)(子会社)資 本 金  ×××/(貸方)S社株式  ×××

    (子会社)資本剰余金   ××   非支配株主持分   ××

    (子会社)利益剰余金   ××   負ののれん発生益  ××